1Q84(☆☆☆☆)

IQ84だと思ってた。意味深なタイトルだな、と。
まあ、いつもの村上さんです。
・・・
青豆に殺されたい。世の中がおかしいのか、自分がおかしいのか、
他人がおかしいのか、すべてがおかしいのか。
不安になる瞬間ってあると思う。ない人もいるかもしれないけど。
現実感がない。実感が持てない。漠然とした不安とか。
自分が見ているものが、本当に正しいものなのか。確信が持てない。
自分を信じるしかないわけだけど。
そうやって、騙し騙し生きてくしかないのかな、と。
・・・
作品としては、またうまく煙に巻かれてしまったという印象。
村上春樹に限らず、小説の醍醐味は、結末にあるのではなく、
過程にあるのはわかりつつも。
うやむやなまま終わるという。答えは読者一人ひとりの中にある。
「説明しないと分からないことは、説明できないということだ」的な。
歴史、政治、社会、世相、宗教、時代、精神、教育、生と死、愛と性、
血縁、友情、文学、音楽、スポーツ、あらゆる要素が緻密なバランス
で配合されているし、物語の進行にそれらが無駄なく無理なく、
適材適所に配置されている。
携帯電話がない時代なんだ。「海辺のカフカ」での反省(あれば)を
踏まえてこの時代設定にしたのかな。
作家としてのピークを過ぎてしまったんだと思う。
ファンとしては残念だけど、認めざるを得ない。
だからと言って全く価値がないということにはならない。
続編があるのかないのか知らないけど、このまま終わってよいの?
というのが読了後の率直な感想でした。チャオ。